
東大/順天堂大/帝京大学/日大 にて認知神経科学の研究。
(1)海馬で合成する男性・女性ホルモンにより、認知機能の低下を改善する研究。<記憶中枢の海馬では男性・女性ホルモンを合成して記憶力を増強している>
「脳以外の内臓などの身体ではステロイドホルモンもペプチドホルモンも、情報伝達物質として勢力を二分しているのに、脳では ステロイドホルモンが合成されないとされてきたが、私はこれは間違いではないか」と長い間考えていた。 皆さんも、脳が精巣や卵巣からくる性ホルモンの支配下にある(神経内分泌学の常識でした)というのは 本末転倒ではないか!と思いませんか?
1995年からの20年以上をかけた我々の研究の結果、脳海馬のステロイドの合成と作用の全体像を描くことが出来た。 いまや脳の新しい情報伝達物質としての脳ステロイド学が大発展している。
新しい分子論的な機構として、神経シナプスに存在する(膜上)ステロイド受容体のnon-genomic作用で→蛋白キナーゼを駆動し→神経シナプスが増加したり、 または長期増強が増強される、という一時間で起こる速い作用経路を明らかにした。これは、神経内分泌学の常識であった、一日はかかる、古典的なステロイドの核内受容体からの genomicな遺伝子転写経路とは全く異なる。現実はnon-genomic作用とgenomic作用が両者助け合って働いていることが、多くの最近の論文で認められている。
(2)老化により海馬で引き起こされる認知症やアルツハイマー症の治療法として、女性・男性ホルモン補充療法は最も成功しており、世界的中で1000万人以上に対して行われている。この効果の原理は、海馬神経で合成される女性・男性ホルモンが、性ホルモンとしてではなく、神経シナプス成長因子として働いていて、その作用を補充療法が活性化することに起因する、ということを発見した。常識に反して、雄の脳の方が雌の脳より女性ホルモンを多く合成するので、雄の神経回路が出来上がるのです。記憶中枢で雄雌の神経回路の違いを探る研究は世界で盛大に行われている。


(3)ストレスホルモンcorticosterone, cortisol (CORT) の神経シナプス作用の研究。
世界的に、うつ病を引き起こす病的なストレスは良く研究されているが、 我々研究からは、CORTの本来の良い神経作用は、(A) 敵や危機に遭遇した時に「Fight or Flight 戦うか逃げるか」を決める認知心理作用、(B) 体内時計の出力としての朝起きるときの起床信号、 であると考えている。この分子論的な機構として、神経シナプスに存在する (膜上)ステロイド受容体のnon-genomic作用で→蛋白キナーゼを駆動し →神経シナプスが増加したり、 または長期増強が抑制されるという、 一時間で起こる速い作用経路を明らかにした。
(4) Project の成果として、神経シナプス3次元配線の数理自動解析法の開発に成功して、神経スパイン自動解析ソフト Spiso-3D を公開し配布している。外国も含めて、結構な数の研究者が利用している。 → ”Full Spiso-3D”をダウンロードして使用できます。
>> [Spiso3D 操作マニュアル],[Full Spiso-3D], 「Spisoよく起こる問題と解決法」, 「Java32bitを使用せよ→Spiso と ImageJ」
論文 Cerebral Cortex (2011), [PDF] [MOVIE] ,[Neuron, 2020]
(5) 臨床研究Project の成果として、老化によるヒト空間認知機能の低下や、その回復を3D-迷路脱出ゲームでテストできる方法を確立した。
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卒業生の進路
川戸研卒業生の進路は、教授(日本医科大、東工大、東京理科大、東京農工大、成蹊大)、准教授(北大、東大)、講師(明治大、杏林大医、慶応大) 、助手(東大、浜松医科大、日大)、主任研究員(産総研・NTT・企業研究所)などである。 主に、脳神経科学や生物物理学の研究者として活躍している。有名企業でコンサルタントとして活躍している出身者も結構いるのは、脳科学系の特徴かとも思う。
