脳での精神現象を担う高次情報変換を生物物理学と分子細胞生物学で解明する研究を行っている。神経シナプス伝達に伴う電気信号、Ca信号、神経ステロイド信号など情報の受信・変換・発信メカニズムを解析。電気生理・顕微蛍光イメージングなどの計測法を縦軸、分子細胞生物学を横軸として、研究している

 具体的には現在以下のようなことを研究している。

  1. 記憶学習中枢の海馬で合成される神経ステロイド(男性・女性ホルモンを含む)は新しい型のモジュレータであり、グルタミン酸受容体に働き、記憶・学習機能を活性化する。多電極を用いた電気生理とレーザー蛍光顕微システムを用いて、神経ネットワークや神経シナプスの交信機構を解析

  2. 老化により海馬で引き起こされる認知症やアルツハイマー症の治療法として、性ホルモン補充療法は最も成功しており、世界的中で1000万人に対して行われている。この効果の原理は、海馬神経で合成される女性・男性ホルモンが、性ホルモンとしてではなく、神経シナプス成長因子として働いていて、その作用を補充療法が活性化することに起因する、ということを発見した。常識に反して、雄の脳の方が雌の脳より女性ホルモンを多く合成するので、雄の神経回路が出来上がる。記憶中枢での雄雌の神経回路の違いを探っている。ストレスホルモンによる海馬神経シナプスの抑うつ症と、その改善機構を解析

  3. 海馬でのニューロステロイド合成酵素と受容体からなるネットワークの遺伝子解析。 KOマウスや遺伝子改変マウスを用いた解析。受容体や蛋白を発現した人工脳細胞を用いての上記研究

  4. 脳型コンピュータのアルゴリズムを見つけることを目指した研究。 神経シナプス3次元配線の数理自動解析法の開発を進めている

  5. 神経スパイン解析ソフト Spiso-3D を開発
    "Full Spiso-3D"をダウンロードして使用できます。
    >> [Spiso3D 操作マニュアル],[Full Spiso-3D], 「Spisoよく起こる問題と解決法」
    , 「Java32bitを使用せよ→Spiso と ImageJ」
    論文 Cerebral Cortex (2011) 21:2704-2711, [PDF] [MOVIE] ,[Neuron, 2020]


 東大時代は当研究室は総合文化大学院/広域科学専攻/生命環境科学系及び理学系大学院/物理学専攻の2専攻から 大学院生を受け入れている。大学院生は、物理系出身者は計測や解析を、生命系出身者は分子細胞生物学と、 各自の得意な分野を生かして研究している。

 川戸研出身者の進路は、教授(東工大、東京理科大)、助教授(北大、東大、東京農工大、成蹊大)、講師(明治大、杏林大医) 助手(東大、慶応大、浜松医科大)、博士研究員(東大、企業基礎研)など生物物理の研究者として活躍している

 東大大学院/総合文化研究科/広域科学専攻の特徴は、学際研究に特に中心を置いている専攻で、生物物理 研究なんかには最適。同じ専攻内に生命科学・物理・生化学・化学・心理学・情報システム学などもあるから。 研究室は約100、大学院生は1学年100名程度入学する。